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薄毛が気になったら読む、AGA(男性型脱毛症)治療の基礎知識

駆け出し医療系ブロガー

はじめに

 「最近、髪のボリュームが減ってきた」「生え際が後退している気がする」「あたまのてっぺんが、、、、」――そんな悩みを抱える男性は少なくありません。成人男性の薄毛の多くは「AGA(男性型脱毛症)」によるもので、放っておくとゆっくりと進行していきます。
 一方で、AGAは医学的な研究が進んでおり、効果が確認された治療法があります。この記事では、AGAの基本から原因、進行度、治療法、市販の育毛剤との違い、そして日本皮膚科学会のガイドラインでの推奨度までをわかりやすく解説します。

1. AGA(男性型脱毛症)とは

 AGAは「Androgenetic Alopecia」の略で、日本語では「男性型脱毛症」と呼ばれます。思春期以降に始まり、額の生え際や頭頂部の髪が徐々に細く・短くなり、薄くなっていくのが特徴です。
 日本人男性では、20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降で40数%にAGAがみられると報告されており、決して珍しいものではありません。遺伝的な体質と男性ホルモンの影響が大きく関わっています。

AGAの主な特徴

 ゆっくり進行する:数年〜十数年かけて少しずつ薄くなります。

 部位に特徴がある:生え際(M字)や頭頂部(つむじ周辺)から薄くなり、後頭部や側頭部は残りやすい傾向があります。

 髪が細く短くなる:急に抜け落ちるというより、太い毛が細く柔らかい毛(軟毛)に置き換わっていきます。

自然には治らない:進行性のため、早めの対策が大切です。

2. AGAの機序(なぜ薄毛になるのか)

 AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。全体の流れは下の図のとおりです。

それぞれのステップを順に見てみましょう。

① テストステロンがDHTに変わる

 男性ホルモン「テストステロン」は、毛根周辺(毛乳頭など)にある酵素「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」によって、より強力な男性ホルモン「DHT」に変換されます。5αリダクターゼにはI型とII型があり、特にII型は前頭部や頭頂部の毛乳頭に多く存在します。

② DHTが受容体と結びつき、脱毛シグナルが出る

 DHTが毛乳頭細胞の「アンドロゲン受容体」と結合すると、TGF-βなどの因子が産生され、「髪の成長を止めなさい」というシグナルが毛母細胞に送られます。

③ ヘアサイクルが短くなる

 髪には「成長期(2〜6年)→退行期(約2週間)→休止期(数か月)」というヘアサイクルがあります。AGAでは成長期が数か月〜1年程度に短縮され、髪が太く長く育つ前に抜けてしまいます。これを繰り返すうちに毛包が小さくなり(ミニチュア化)、細く短い毛ばかりになって地肌が目立つようになります。

遺伝との関係

 5αリダクターゼの活性の強さや、アンドロゲン受容体の感受性は遺伝の影響を受けます。特にアンドロゲン受容体の遺伝子はX染色体上にあるため、母方の家系からの影響もあるといわれています。

3. AGAの重症度・進行度

 AGAの進行度を表す分類として、世界的には「ハミルトン・ノーウッド分類」が広く使われています。日本人は頭頂部から薄くなるタイプが多いため、それを加えた「高島分類(日本人向けの改良版)」も用いられます。

段階目安状態のイメージ
I型正常〜ごく初期生え際の後退はほとんどない
II型初期額の両サイド(M字部分)がやや後退
II vertex型初期(頭頂部)II型に加えて頭頂部も薄くなり始める(日本人に多い)
III型軽度〜中等度M字の後退がはっきりし、薄毛と自覚しやすい
III vertex型中等度III型に加えて頭頂部の薄毛が目立つ
IV〜V型中等度〜重度前頭部と頭頂部の薄毛が広がり、境目が狭くなる
VI〜VII型重度前頭部から頭頂部までつながって薄くなり、側頭部・後頭部のみ残る

 I〜III型程度の早い段階であれば、薬物療法によって進行を抑えたり、髪を回復させたりできる可能性が高まります。逆に、毛包が完全に失われてしまうと薬での回復は難しくなるため、「早めの対策」がとても重要です。

ご自身でできるセルフチェックのポイント
  • 以前より額が広くなった、M字部分が深くなった
  • つむじ周りの地肌が透けて見える
  • 抜け毛に細く短い毛が増えた
  • 髪のハリ・コシがなくなり、セットしにくくなった
  • 父親や母方の祖父など、家族に薄毛の人がいる

4. 一般的な治療方法

 AGAの治療は大きく「内服薬」「外用薬」「その他の治療(植毛・光治療など)」に分けられます。多くの場合、内服薬と外用薬の組み合わせが治療の中心になります。なお、AGA治療は美容目的とみなされるため、原則として健康保険は適用されず自由診療となります。

① 内服薬(抜け毛を止める=守りの治療)
  • フィナステリド(商品名:プロペシアなど):5αリダクターゼII型を阻害し、DHTの生成を抑えて抜け毛を減らします。
  • デュタステリド(商品名:ザガーロなど):5αリダクターゼのI型・II型の両方を阻害し、より強くDHTを抑えます。

 これらは医療用医薬品のため、医師による診察が必要になります(ドラッグストアなどで購入はできません)。

② 外用薬(髪を生やす=攻めの治療)
  • ミノキシジル外用薬(商品名:リアップ、スカルプD、リグロなど):毛包に直接働きかけて毛母細胞を活性化し、発毛を促します。市販の発毛剤(第1類医薬品)としてドラッグストアなどで購入できます。
③ その他の治療
  • 自毛植毛:薄毛の影響を受けにくい後頭部の毛包を、薄くなった部分に移植する外科的治療です。
  • LED・低出力レーザー照射:光を頭皮に当てて発毛を促す治療法です。
  • 注入療法(メソセラピーなど):成長因子などを頭皮に注入する治療ですが、ガイドラインでの評価は定まっていません。
④ 市販の育毛剤・養毛剤によるセルフケア

 医療機関に行かなくても、ドラッグストアや通販で手軽に買える「育毛剤」「養毛剤」でケアを始める人も多くいます。これらは頭皮の血行促進や保湿、フケ・かゆみの予防などで「今ある髪を健やかに保つ」ことを目的としたもので、価格も手ごろで副作用のリスクも低いのがメリットです。

 ただし、育毛剤・養毛剤はAGAの原因であるDHTを抑える作用はなく、すでに進行しているAGAを改善する効果は期待しにくいのが実情です。ガイドラインでも、育毛剤に使われるアデノシンは推奨度B、t-フラバノンなどはC1(行ってもよい)にとどまっています。「抜け毛予防や頭皮ケアの補助」と位置づけ、薄毛が進んでいる場合は医薬品による治療を検討しましょう。各製品の違いは次の章で詳しく解説します。

治療効果が出るまでの期間

 薬物療法は、効果を実感するまでに少なくとも6か月程度の継続が必要とされています。また、服用・使用をやめるとDHTの影響が戻り、再び薄毛が進行するため、長期的に続けることが前提となります。

補足. 育毛剤・養毛剤・発毛剤の違い

 ドラッグストアには「育毛剤」「養毛剤」「発毛剤」とさまざまな商品が並んでいますが、これらは法律(医薬品医療機器等法)上の分類と目的が異なります。
 ポイントは、「発毛」をうたえるのは医薬品である発毛剤だけということです。育毛剤や養毛剤は、抜け毛予防や頭皮ケアが主な目的であり、すでに進行したAGAを改善する効果は限定的です。AGAの改善を目指すなら、医薬品(発毛剤や医療機関での処方薬)を検討するのが基本になります。

種類目的・効果代表的な成分・特徴代表的な商品(メーカー)リンク
発毛剤
(第一類医薬品)
新しい髪を生やす・髪を太く育てる(発毛効果が認められている)ミノキシジル。薬剤師の説明を受けて購入。副作用のリスクもあるリアップX5プラスネオ(大正製薬) 
スカルプD メディカルミノキ5(アンファー) 
リグロEX5(ロート製薬) 
育毛剤
(医薬部外品)
今ある髪を育てる・抜け毛を防ぐ・頭皮環境を整えるセンブリエキス、グリチルリチン酸、t-フラバノン、アデノシンなど薬用アデノゲンEX(資生堂) 
サクセス 薬用育毛トニック(花王) 
加美乃素A(加美乃素本舗) 
養毛剤
(医薬部外品)
頭皮や髪を健やかに保つ・フケやかゆみを防ぐ保湿成分、清涼成分など。効果は穏やか柳屋 ヘアトニック(柳屋本店) 

5. 日本皮膚科学会「脱毛症診療ガイドライン2017年版」に基づく治療推奨

 日本皮膚科学会は、科学的根拠(エビデンス)に基づいて各治療法の推奨度を示した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版※」を公表しています。推奨度は次のように定められています。
※2026年9月時点での最新版

推奨度 意味
A 行うよう強く勧める
B 行うよう勧める
C1 行ってもよい
C2 根拠がないので勧められない
D 行うべきではない(無効・有害であることを示す根拠がある)

男性型脱毛症(AGA)に対する治療法別の推奨度

 つまり、ガイドラインで「強く勧める(A)」とされているのは、フィナステリド・デュタステリドの内服とミノキシジルの外用の3つです。一方、一部のクリニックで処方される「ミノキシジルの内服」は、国内で承認されておらず、動悸やむくみなどの全身性の副作用があることから「D(行うべきではない)」とされている点に注意が必要です。

6. 治療薬の副作用と注意点

効果が認められた治療薬にも副作用はあります。治療を始める前に知っておきたいポイントをまとめます。

薬主な副作用注意点
フィナステリド性欲減退、勃起機能不全、肝機能障害など(頻度は低い)PSA値(前立腺がんの検査値)が約半分に低下するため、検診時は服用を申告。服用中止後1か月は献血不可
デュタステリドフィナステリドと同様。やや頻度が高いとされるPSA値が低下。服用中止後6か月は献血不可
ミノキシジル外用頭皮のかゆみ・かぶれ・発疹、初期脱毛心臓・血圧に持病がある方は医師・薬剤師に相談
  • 女性・子どもは触れない:フィナステリド・デュタステリドは皮膚からも吸収されるため、妊娠中・授乳中の女性は割れた錠剤やカプセルに触れないよう注意が必要です。
  • 初期脱毛:治療開始後1〜2か月ほどで一時的に抜け毛が増えることがありますが、ヘアサイクルが正常化する過程で起こるもので、多くは自然に落ち着きます。

7. 受診の目安と費用の目安

こんなときは医療機関へ
  • セルフチェックで当てはまる項目が複数ある
  • 急に大量に抜ける、円形に抜けるなど、AGAらしくない抜け方をしている
  • 頭皮にかゆみ・赤み・フケが多いなどの症状がある
  • 市販の発毛剤を半年以上使っても変化がない

 受診先は、一般の皮膚科またはAGA専門クリニックが中心です。皮膚科では他の脱毛症との鑑別ができ、専門クリニックでは治療の選択肢やオンライン診療が充実している傾向があります。

費用の目安

 AGA治療は自由診療のため、費用は医療機関によって大きく異なります。一般的な目安としては、フィナステリドやデュタステリドのジェネリックで月5千円程度、外用薬との併用で月1万円前後〜、自毛植毛は範囲によって数十万〜百万円以上となることがあります。長期継続が前提となるため、無理なく続けられる費用かどうかも大切な判断材料です。

8. わたしのオススメする治療方法

ここまでの内容を踏まえて、わたしがおすすめする治療の進め方を紹介します。

ステップ1:まずは医療機関で「AGAかどうか」を確認する

 薄毛の原因はAGAだけではありません。自己判断で市販品を試し続けるより、一度皮膚科やAGAクリニックで診断を受けるのが近道です。最近はオンライン診療も増え、気軽に相談できるようになっています。

ステップ2:「守り+攻め」の基本治療を始める

 ガイドラインで推奨度Aの「フィナステリド(またはデュタステリド)内服」で抜け毛を抑え、「ミノキシジル外用」で発毛を促す組み合わせが基本です。エビデンスがしっかりしており、まず選ぶべき王道の治療だと考えています。

フィナステリドとデュタステリドの使い分け

 内服薬の2つは、どちらもガイドラインで推奨度Aですが、特徴には違いがあります。

フィナステリドデュタステリド
主な商品名プロペシア(ジェネリックあり)ザガーロ(ジェネリックあり)
ブロックする酵素5αリダクターゼ II型5αリダクターゼ I型・II型の両方
DHTを抑える力血中DHTを約70%低下血中DHTを約90%以上低下
国内でのAGA承認2005年(使用実績が長い)2015年
費用月数千円程度フィナステリドより少々高め
副作用性欲減退・勃起機能不全など(頻度は低い)フィナステリドとほぼ同程度
献血できない期間服用中止後1か月服用中止後6か月

根拠となる臨床試験:日本を含む国際共同試験(20〜50歳の男性917人、24週間)では、デュタステリド0.5mgがフィナステリド1mgよりも毛髪数を有意に増やし、副作用の発現率は両者で同程度でした(Gubelin Harcha W, et al. J Am Acad Dermatol. 2014)。この試験は国内でのデュタステリド承認の根拠にもなっています。

 こうした根拠を踏まえ、わたしは次のように使い分けるのがよいと考えています。しかしながら、一人ひとり状況が異なるため、最終的には医師と相談して決めましょう。

  • まずはフィナステリドから:使用実績が長く、費用も抑えやすいため、最初の一手として始めやすい薬です。多くの人で抜け毛の進行を抑える効果が期待できます。
  • 効果が不十分ならデュタステリドへ:フィナステリドを6か月〜1年続けても満足できない場合は、より強くDHTを抑えるデュタステリドへの切り替えを医師に相談します。
  • 最初からデュタステリドという選択も:進行がある程度進んでいる、より高い効果を優先したい、という場合は、はじめからデュタステリドを選ぶのも合理的と考えます。

 ただし、2つを併用はしない:作用機序が類似するため、両方を同時に飲むことはせず、どちらか一方を選びます。

ステップ3:6か月〜1年は継続して効果を判定する

効果が出るまでには時間がかかります。毎月同じ角度・同じ照明で頭部の写真を撮っておくと、変化を客観的に確認できておすすめです。

ステップ4:効果が不十分なら次の選択肢を検討する

 薬物療法で満足できない場合は、自毛植毛(推奨度B)やLED治療(推奨度B)などを医師と相談しながら検討します。

おすすめしないこと
  • 効果の根拠が乏しい高額な治療やサプリメントに頼ること
  • 個人輸入の薬を医師の管理なしで使うこと(偽造品や健康被害のリスク)
  • ガイドラインで推奨されていないミノキシジル内服を安易に始めること

9. 治療と一緒に見直したい生活習慣

 生活習慣だけでAGAを治すことはできませんが、髪や頭皮の健康を保つうえで役立ちます。

  • 睡眠:成長ホルモンが分泌される睡眠をしっかりとる
  • 食事:タンパク質、亜鉛、ビタミン類をバランスよくとる
  • 喫煙:血流を悪くするため、禁煙が望ましい
  • 頭皮ケア:洗いすぎ・強くこすりすぎに注意し、やさしく洗う

10.まとめ

  • AGAはDHTによってヘアサイクルが短くなる、進行性の脱毛症
  • 早い段階で治療を始めるほど、効果が期待しやすい
  • ガイドラインで強く推奨(A)されているのは、フィナステリド・デュタステリド内服とミノキシジル外用
  • 育毛剤・養毛剤は「予防・ケア」、発毛剤は「発毛」と目的が異なる
  • 治療は長期継続が前提。まずは医療機関で相談を

 薄毛の悩みは一人で抱え込みがちですが、正しい知識をもって早めに行動すれば、改善できる可能性は十分にあります。AGA治療は自費診療になりますが、自分で効果の根拠が乏しい高額な治療やサプリメントを購入するよりも、医療機関を受診し適切な治療法を提案してもらうが費用対効果がよいように私自身は思います。この記事が、お悩み解決においてのきっかけになればうれしいです。

参考文献

  • 眞鍋求ほか「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日本皮膚科学会雑誌 127(13): 2763-2777, 2017
  • Gubelin Harcha W, et al. A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia. J Am Acad Dermatol. 2014;70(3):489-498.

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を代替するものではありません。治療を検討される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

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